期限厳守 Time is of the essence.
英文契約書でも少し詳細なものになると、「期限厳守 Time is of the essence.」規定が挿入される場合があります。例えば以下のような文面が一般的です。
Time is of the essence of this Agreement.
時間(期限)はこの契約書の根本的要素である。
つまり、契約書に規定された期限は厳守されるべきである、という規定です。私は、常々、このような規定が敢えて挿入されていることに違和感を覚えていました。契約書で定められた日時を守ることは、契約当事者として当然のことだと思われるからです。
さて、話は変わって、現在留学中の台湾出身のWさんに日本(名古屋)の印象を聞いてみると、彼女の感想は「人々が時間に正確(punctual)で驚いた。」というものでした。特に地下鉄の時刻の正確さに感動したそうです。そういえば私自身も先月、京都から綾部まで行くために乗車した電車の道中で、少し驚いたことがありました。京都から綾部までは、約76キロの距離があり、時間にすると約70分かかることが予定されていましたが、中間地点付近で、「大変申し訳ございません。ただいま・・・との理由で、約3分の遅れが生じております。」との車内アナウンスが流れたのです。私は謝るほどの遅れでもないのにと思いました。その後、さらに進んだ地点で再度アナウンスが入り「先ほどの遅れは解消され、綾部には時間通り到着する予定」であることが知らされました。電車の運行は、他の電車との接続がある関係上、時間厳守の必要性がより高いことは分かりますが、この電車の場合、結果的には時間どおりの運行となっており、黙っていれば分からなかったのに、とひとり苦笑してしまいました。いずれにせよ、日本人の時間に対する考え方がよく表れている一例でしょう。
さて、英文契約書の件ですが、時間を守ることが当然な環境に慣れてしまった私が「時間厳守条項」に違和感を覚えるのはある意味自然であることに気が付かされました。そして日本語で書かれた契約書にこの「時間厳守条項」がめったに挿入されないのも(今まで数多くの和文契約書を見てきましたが時間厳守を敢えて定める規定を見たことがありません・・・)時間を守ることが当たり前である日本文化を前提にしているからなのだと思いました。